赤黄色のバウムクーヘン

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アルバム紹介『CHRONICLE』フジファブリック 前編

アルバム紹介『CHRONICLE』フジファブリック 前編

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フジファブリックのアルバムのことを書き続け、今回で4枚目。

この「CHRONICLE」は全曲ボーカルギターの志村正彦さん作詞作曲となっており、

全アレンジもほぼ全て一人で手掛けたとか。

 

このアルバムは人間の奥底の本質がギュッと詰まっている内容だと感じており、

何度も聴いては、その度に救われてきた1枚となっている。

 

初めて聴いた10代の頃と今ではこのアルバムに対する考え方、感じ方も変わってきているが、今ならではの感想も交えつつ記してみたいと思う。

 


1.バウムクーヘン

一曲目から特に大好きな一曲。

 

志村さんの心情がとてもよく伝わってくる内容だが、自分自身にも共通していることが多々あるため、「これは私信なのでは?」とすら思ってしまった。

初めて聴いた時に泣いた記憶がある。刺さりすぎたのかもしれない。

恐らくこの歌詞に共感できるという人も多いのではないかと考える。

 

音はポップでロックな感じに彩られているため聴きやすいが、

聴けば聴くほど人の本質の一端に触れているような気がして、内容は重い。

 

内容は重いが、もしかすると聞き手のこれまでの人生経験によって感じ方が違うのかもしれない。

自分はこの曲に共感できる人と仲良くなりたい と生意気ながら心の奥底で思っている。

 

あまりにも好きな曲のため、ブログのタイトルの一部として採用させていただいた。

 


2.Sugar!!

J-SPORTS 2009WBC中継曲、「J SPORTS STADIUM2010」テーマ曲として使用された一曲。

 

このアルバムの中で異質なくらいに明るい。

あの亀田誠治さんプロデュース曲。

 

これまでの志村さんの作る曲の歌詞は文学的で、何度読み込んでも解釈できないものもあった。

しかしこの曲のサビは

 

全力で走れ 全力で走れ

 

である。ストレートに伝わってくる。

 

MVを見てもらえると分かってもらえると思うが、気怠そうな雰囲気で歌う志村さんの口から

この言葉が出てくるのはなんだか面白い。

 

ストレートでわかりやすい言葉だからこそ、きっとこの歌詞に勇気づけられた人が沢山いると思っている。

 

ただこの曲も心情が覗ける部分がある。

2番の冒頭で 時なんて取り戻せるからね と歌っている。

過去のアルバムで「今の自分から見た過去の自分」ということを表現してきた人が

このような心情を表したということに意味があるような気がした。

 

そこに そうだよ、たぶん と付け足されていることにより、志村さんの作る歌詞らしさがグッと増している。「好き」と表現するのではなく、「嫌いではない」と表現する方ですし。

 


3.Merry-Go-Round

ハードなギターサウンドに摩訶不思議な歌詞。

歌詞の内容は何度読んでもよくわからない。意味はあるのかもしれないし、特にないのかもしれないが、わからないものはわからない。

他のアルバムでも垣間見える変態な一面を覗かせているのは間違いない。

 

曲としてはとにかくノれる。ライブで聴いてみたい。

タイムスリップできるなら当時のツアー参加したい。

とか考えていたら、自分が唯一、志村さんの生前に見ることができたライブ「三大博物館」のセトリに入っていた。記憶を取り戻したい、切実に。

 


4.Monster

3曲目のMerry-Go-Roundに続き、ハードなサウンド続き。

男性ならば超絶モテる人以外はみんな共感できる歌詞なのではないかと。

個人的に爆音でこの曲を流しながら首都高を走りたい。

ただ、テンションが上がりすぎて大変なことになりそうなので自重する。

 

非常にクセになり頭に残りやすい一曲。

 


5.クロニクル

アルバムセルフタイトル曲。

冒頭のイントロから非常に好きなコード音で鳴っている。

 

僕が君のことを忘れてしまうこと。

君が僕のことを忘れてしまうこと。

 

忘れてしまうこと、忘れられてしまうことに対していつも考えていたんだなと思う。

他のアルバム曲でも同様のテーマが見られる。考えが一貫していた。

 

また他の曲でも見られる「時間の対比」が表現されている。

君と遊んだ場所(ブランコ)は思い出として残っているが、現実ではその場所が無くなっていることも当てはまるだろう。

 

記憶は薄れてしまう、忘れてしまうという人間の本質を突いてきている。そんなふうに感じる。

 

失恋したときに優しく寄り添ってくれる。

 


6.エイプリル

優しい音、優しい歌声に誘われて6曲目。

5曲目クロニクルと伝えたいテーマは同じかもしれない。

CHRONICLE…志村さんの自分史と言えるのだろう。

 

別れの非常に切ない場面が描かれている。

この思い出も時が経てば良い思い出として残るのだろうか。

それとも記憶が薄れて、いつか忘れてしまう?

 

振り返らずに歩いた という一文にこの曲の力強さを感じる。

 

どうせこの僕なんかにと ひねくれがちなのです

そんな事ないよなんて 誰か教えてくれないかな

冒頭のこの歌詞2文で自分の胸はギュッと締め付けられる。

 


7.Clock

5曲目クロニクル、6曲目エイプリルと失恋がテーマの曲が続いた後に

「孤独」がテーマのこの曲が配置されている。

失恋した後の「夜」に寄り添ってくれているのかな。

失恋に限定する必要もないかもしれないが。

 

この夜の乗り越え方を誰も教えてはくれないし、答えがない。

その人それぞれにしか答えがない。

だからこそ、押し付けることもなく、ただただ優しく寄り添ってくれるこの曲が沁みる。

 


8.Listen to the music

自身を犬に見立てている歌詞が秀逸。

 

ここまで自分史と言える内省的な内容の曲が続いているが、それに対してなのか、

でももうちょっと聴いて という1文に志村さんらしさが出ている気がする。

 

最後 回れ右 で締め括られているのもなんか良い。

 


終わりに

まだここから7曲続くが、この記事は一旦ここで一区切りを入れたい。

 

自分が初めてこのアルバムを聴いた10代の頃は、曲を聴くのに対して歌詞に重きを置いていなかった。

そのため、初めは曲のポップさに影響を受け、明るいアルバムだと考えていた。

そんな自分に歌詞の重要性を教えてくれたのはフジファブリックであり、このアルバムだった。

 

自分は「志村正彦」という人間に対し、ゴッホ宮沢賢治のような芸術家であったと感じている。

フジファブリックは一定以上の評価を得ていたため、全てが該当するわけではないが。

この「CHRONICLE」が発売された当時、CDを買い、ツアーに足を運ぶ。

そんな一ファンとしての寄り添い方をしたかったと考えてしまう。

 

CHRONICLEツアーが終わったすぐ後に、初めてフジファブリックのライブを見たのは

何という巡り合わせなのだろうか。

 

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残り7曲も自分なりに向き合いたい。

 

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