赤黄色のバウムクーヘン

音楽を中心に、誰かと何かを共有したいブログ

アルバム紹介『CHRONICLE』フジファブリック 後編

アルバム紹介『CHRONICLE』フジファブリック 後編

CHRONICLE(DVD付)

CHRONICLE(DVD付)

Amazon

 

light-miscellaneous-notes.hatenadiary.com

今回は9曲目から記す。8曲目までは↑にて。

 


9.同じ月

この曲も2曲目「Sugar!!」と同じく亀田誠治さんプロデュース曲。

君への後悔と変わらぬ日常の対比で描かれている。

 

志村正彦さん(ボーカルギター)の書いた曲では、記憶は薄れる、忘れてしまうと何度も言ってきており、

この曲でも映画は見てもすぐに忘れると言っているが、

後悔は尽きず、心の中に残り続けていることが伝わってくる。

 

その心情が分かると何とも切ない。

正にクロニクル。

 


10.Anthem

切なさが力強く伝わるバラード曲。

 

「ない」や「いない」といった言葉を重ねることでテンポの良さ、語感の良さを感じさせるが、それと同時に切なさも助長させているように思う。

 

なんて切ないラブソングなんだ。

ここまでアルバムを通しで聴いていると、自身のこれまでが思い起こされ、感情が揺さぶられ続ける。

 

志村さんは時間の経過を表現するのに長けた人だと考えているが、今回は

三日月さんが逆さになってしまった である。

誰か過去の偉人がこの表現を使っていたのだろうか。思いつかないこんな表現。

 

また、この曲は加藤慎一さんのベース音が特に心に響く。

 


11.Laid Back

laid-back(形)

  1. 〔雰囲気・生活・音楽などが〕リラックスした、くつろいだ、のんびりした、ゆったりした
  2. 〔人の性格などが〕おおらかな、こだわらない、気軽な、こだわりのない

ここまで内省的な曲が続いた中で、2曲目の「Sugar!!」と並ぶ明るく陽気なこの曲が挟まれている。

 

キラキラとしたシンセサイザーの音、ハンドクラップ、コーラスが含まれており、

聴いていて楽しい。

 

ライブ映像を見ても客席はノリノリ。テンションが上がる一曲である。

 


12.All Right

11曲目Laid Backから続けてノリノリな一曲。

ハードなサウンドに破壊的な叫び。内省的な雰囲気を吹き飛ばす勢い。

シャウトのみのサビがとてつもなくカッコイイ。

魂の叫び。命を削っている感じが伝わってくる。

 

ライブハウスで酒を飲みながら頭ガンガンに振って聴きたい。

CHRONICLEツアー以降披露されていないこの曲。山内さん歌ってくれないかな。

 


13.タイムマシン

11曲目Laid Back、12曲目All Rightを挟み、志村さんの内なる声が聞こえてくる一曲。

陽気な音、ハードな爆音の後にこの曲を聴いてもダメだ、泣いてしまう。

トドメを刺されたような気持ちで、感情が止め処なく溢れてくる。

 

このアルバムを通して言っている内容は一貫している。

またこれまでのアルバム作品を通じて聴いていくと迷いや葛藤も見えてくる。

 

恐らく、人生成功しっぱなし!敗北は知らない!という超人ならば、この曲は、このアルバムは全く刺さらないだろうし、意味もわからないだろう。

 

自分のような失敗続き、人よりも秀でたことも特に思いつかないような人に刺さるはず。

 

タイムマシンはない、過去には戻れない。

そんなことは分かっているが、戻れるなら2009年に戻りたい。

あなたの声をもう一度聴きたい。

 


14.ないものねだり

13曲目タイムマシンでトドメを刺され、感情の行き場がなくなった後に

のどかな音色に誘われて辿り着いたこの曲。

 

この曲も一貫して言っていることは変わっていないが、

あの花は何ていう名前なんだろうか という日常の素朴な疑問が添えられていることにより、

この曲も優しく寄り添ってくれているように感じる。「自分も同じだよ」と。

「ないものねだり」考えちゃうよね。

 

このアルバムは一貫した内容の中、感情の起伏が激しいが

その終着点がこの曲だとすると(あと1曲ありますが)、普遍的な憂鬱、心の片隅の一片として消化される。 

アルバムのタイトル『CHRONICLE』がとても秀逸だと改めて思わされる。

 

ちなみに、志村さん自身はこのアルバムの中で一番この曲が好きだとインタビューにて回答している。

 


15.Stockholm

今作は2曲目「Sugar!!」と9曲目「同じ月」以外はストックホルムでレコーディングされている。

そしてこの曲は唯一ストックホルムにて書き上げられたとか。

 

国が変わり、景色が変わっても、君のことを想う。

 

このアルバムは自分史でありつつ、壮大なラブソングな一枚なのだとこの曲を聴いて改めて感じた。

自分史=自身の内省的な部分=恋愛のこと。

スウェーデンの街並みを眺めながら、アメスピを吸いながら佇んでいる志村さんが目に浮かぶ。

 

 

スウェーデンストックホルム。一度行ってみたい場所である。

 


終わりに

志村正彦という一人の人間の内省的な面に触れることが多かったため、

特に記事を書くのに時間を要した気がする。

内容はこれで良かったか、まだ書きたかったこと、表現したかったことがないかと文章を読み返していたりした。

 

内省的な面に触れることが多いとは言ったが、決して独りよがりな内容ではなく

誰しもが思うことを描き、寄り添ってくれているように思う。

 

改めて文章にしてみて良かった。

このアルバムの楽曲一つ一つの良さを自分自身も再認識することができた。

 

後世にも伝わってほしい名盤の一つだと思う。

多くの人に伝わる名曲揃いな一枚だと信じている。

聴いたことがない方がいたら、是非1曲目から順に聴いてみてほしいと切に願う。

 

light-miscellaneous-notes.hatenadiary.com